『濫觴(らんしょう)』とは、大河もその起源を遡るとさかずきを満たすほどの一杯の水であったことを意味し、転じて物事の起こりをあらわします。
地上に降り注いだ雨や雪融けによる湧水はやがて沢となり、地表を流れたり、地中へと浸透したりしながら、高い方から低い方へと重力に引き寄せられ、川は形成されてゆきます。一杯の水が雄大な川となるには気の遠くなるような時間を要し、時には水が濁り、枯渇することもあるかもしれません。しかし、地中に浸透した水は、目で見ることはできませんが、地表にあらわれていない時でも、地下水となって地中をゆっくりと移動し、所々で染み出したり、湧き出したりし続けながら、いつの日か絶えることのない、豊かな大河となります。
本展の『濫觴』という言葉には、いま、ここを水源とした流れがはじまることを、未来に向けて自らに刻むような自戒の意味も込められています。
様々な来歴を経て、写真というメディウムを探求している彼らの多様な表現によって形成される水系を、是非会場でご高覧ください。
〔出展作家〕
一ノ瀬真一郎(SHINICHIRO ICHINOSE)
遠藤絢斗(KENTO ENDO)
奥田詩衣菜(SHIINA OKUDA)
勝部世志子(YOSHIKO KATSUBE)
佐和橋ひなた(HINATA SAWAHASHI)
諏訪万修(MASHU SUWA)
津島直道(NAOMICHI TSUSHIMA)
羽地優太郎(YUTARO HANEJI)
吉田ゆきの(YUKINO YOSHIDA)