写真を好きになったきっかけは、絵を描くよりも正確に、かつ簡単に表現できると考えたからでした。
まっすぐな線をまっすぐ描き、目に映った光景をそのまま残したい。
その想いで写真にのめり込んでいきました。
シャッターを切れば、目の前の素敵な光景が一瞬にして切取られ、現像すれば思い描いた情景がプリントされる。
それが楽しくて少年時代から現在に至るまで、無我夢中でシャッターを切ってきました。
モノクロ写真に魅了され、暗室に籠り現像する時期もありました。
写真を撮り始めた頃は、記憶を形に残すために、できるだけ綺麗に見えるように撮影した風景写真が多く、被写体の中に人がいない写真がほとんどでした。
しかし、子供の誕生がきっかけで子供の写真 を撮るようになり、表情から見てとれる感情を切り取ることが楽しいと思えるようになりました。
それからは、風景写真にも人が登場してくるようになり、今のスナップの形ができました。
本書ではそういった心情の変化が垣間見ることが出来るかもしれません。
「いつかは個展をしてみたい」と憧れ、やがてその想いは夢へと代わり、「夢のままで終わらせず形にしてみよう」と、重い腰を上げ取り組みました。
同時に写真集を作ることで、出版する夢も叶えました。
さらにもう一つ。
これも「いつか」と憧れてきたLeicaやHasselbladを手に入れ、
印刷直前まで写真を撮りながら、作品の入れ替えを繰り返してきました。
撮り進めていくにつれて、モノクロの魅力を再認識し、今では、子供たちの写真もスナップも、モノクロカメラで撮影することが大半を占めています。
私にとって今回の個展や写真集制作は確実に、人生の分岐点になりました。
本来であれば、テーマに沿って作品を撮り、その作品で個展開催や写真集制作を行うことがセオリーなのかもしれません。
しかし今回の目的は、人生の節目として、また、これからも写真と向き合うためでした。
今回、準備と並行して、これまで挑戦したことのなかった写真コンテストやLFIにも挑戦しました。
改めて写真と向き合うきっかけにもなった今回の個展に、『Letter -私が誰かと繋がる方法-』と名付けました。
これからも写真を通して、一人でも多くの人と繋がりたい。
私にとって写真は、大切なコミュニケーションツールであり、そして、未来へのLetterでもあります。
今回の個展では、『写真を続けてきたワケ』『写真と向き合ってきた話』『憧れた写真家』『撮影した当時の気持ち』など、プリンティングディレクターの松平光弘(アトリエマツダイラ)氏と対話しながら、どこか懐かしさの漂うプリントに仕上げていただきました。
Profile
京都市生まれ。美術を愛する両親の影響で、小学生の頃、写真に興味を持ち始め、父の持っていたフィルムカメラで、さまざまな写真集や雑誌などの写真を見よう見まねで写真を撮り始める。ハービー・山口氏の写真集を見て、モノクロ写真とLeicaに影響を受け、モノクロフィルムの撮影と自家現像に明け暮れる日々を過ごす。また、この時初めてLeicaを手に入れた。その後、フォトジャーナリストの写真にも興味を持ち始め、Vincent Laforet氏の作品に衝撃を受ける。そこで海外で活躍する写真家に興味を抱き、またアートとしての写真への造詣を深めるために、NYへ移住。学生生活を送る傍ら、雑誌社でのフォトグラファーとしての就職を夢見て、写真を撮り溜め日本へ帰国。しかし、出版不況でその夢は叶わず、広告代理店でデザイナーやディレクターとして広告デザインに携わる。日本各地の世界遺産の取材を担当していたが、途中で打ち切りとなったことがきっかけで、世界遺産や日本の伝統・文化を伝える仕事をしたいと思い、独立。その後、広告デザイナーとして活躍する傍ら、写真に力を入れたWEB MEDIA"BLATRA"を立ち上げ、日本の伝統・文化を撮影・取材する。現在は写真を中心としたデザイン制作を行いながら、写真コンテストにも挑戦。これまでにライカ社が主催する審査制フォトギャラリーLFI(Leica Fotografie International)に4作品が掲載。また、全日本写真連盟が主催する第21回 全日本モノクロ写真展に入賞。2022年9月13日から9月18日まで弘重ギャラリー(恵比寿・東京)にて初個展『Letter-私が誰かと繋がる方法』を開催。また、9月16日から9月22日まで富士フイルムフォトサロン(六本木・東京)にて『全日写連フォトフェスティバル2022-色が伝える美、モノクロと光、人間模様が魅力』に出品。